スズキ グラディウス400 ABS ~最新バイクインプレッション~

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スズキ グラディウス400 ABS ~最新バイクインプレッション~

createMasayuki Miyazaki
camera_altKen Takayanagi

 なにもないけど、ぜんぶある──。

 グラディウスをひと言で表すなら、たぶんこんな言葉になる。いまや400ccのスポーツネイキッドの中で唯一のVツインエンジン搭載車だ。2007年をラストに市場から姿を消したSV400/Sの後継モデルにあたり、2008年のインターモトで長兄の650が先行デビュー。翌2009年末に55psを発揮する高出力エンジンを搭載してこの「400」が国内発売された。コンパクトなスラント形状のヘッドライトや、たくわえたパワーを後方に放出させるかのような造形のマフラー、そしてなによりスタイリッシュなトラス構造のスチールフレーム。2013年現在、デビューからすでに4年が経過しているものの、デザインが古びていないのは素晴らしい。

 話はすこし逸れるが、いまや400ccクラスのメインストリームは2気筒マシンだということを情報として知ってはいても、過去、あれだけ隆盛を誇っていた4気筒マシンが、驚くことに現行車ではたった2台になってしまっていることをあなたは理解しているだろうか。グラディウス400のVツインエンジンは、その残された2台の4気筒マシンのなかでもとくに人気の高いロングセラー、ホンダCB400SUPER FOURの53psを2psしのぐ高出力ツインである。絶対的なパワーで4気筒に勝っているとなれば、80年代、90年代を通じてすっかりハイスペック信仰に洗脳されてしまったライダーも早々に改宗しなければならない。4気筒だから速い、偉い、なんてことはもうない。あれは前のめりな時代の狂騒だったのだ。

 さて、エンジンスタート。外気温が0度以下でも始動後すぐに安定するという燃料噴射システムは、なるほど、なにごともなくエンジンをアイドリングさせる。排気音も当たりの柔らかい至って静かなものだ。しかしひとたびクラッチをつないで発進させれば、その排気音から想像するよりもずっとアクティブな動力性能がすぐに体感できる。グラディウスの水冷Vツインエンジンは、トルクフルというより回転上昇に応じてしっかりと"力"を積み重ねていく粘り強いタイプ。まあ、そもそも「Vツイン=トルクフル」という通りいっぺんの考え方が間違っていると思うのだけど。

 650にあったアイドリングの少し上の回転から車体をグイグイ引っ張っていくようなパワフルさはないが、想像を超えない自然なパワーカーブはライダーのスキルをむやみに置き去りにすることがなく、マン/マシンの関係もイーブンに持ち込みやすいので、結果的にそこには「ハイパワーマシンを自在に操るハイスキルな自分」という過信も生まれにくい。だからと言って低中速タイプというわけではまったくなく、4気筒エンジン並みにスムーズにレッドゾーンのはじまる12500rpmまで回っていく。不快な微振動もきわめて少なく、すべての回転域でライダーは"乗れている"自分を満喫できる。

 そしてそれらのことが結果的に、楽しさ(ファン・トゥ・ライド)に直結しているのだ。これはもう、アンダーパワーはデメリットではなくメリットだと断言できる。400が650に勝っている最大のポイントがアンダーパワーだと言ったら、あなたはいぶかしく思うだろうか。そんなあなたにこそ試乗してみてほしいオートバイだ。

 エンジンの話に終始してしまったが、美点をもうひとつ。ブレーキだ。ABSモデルのみのモノグレードというスズキの判断は、80万円という価格とともに販売的にはリスクがともなうだろうが、安全走行への作り手の態度として、またABSの完成度への自信の表れとして尊敬に値する。実際に試してみたABSの作動フィールは、本当にすばらしかった。フルブレーキから時速0kmまで、ほぼなにも起きない。安心感は絶大で、恐怖心はまったく芽生えない。「すぐれた機械は自分の存在を主張しない」という真理を地で行く、秀逸のデバイスだった。

 原稿のはじめに書いた「なにもない」は、Vツイン400ネイキッドというとってもコンベンショナルなアウトライン。試乗前のアラフォーライダーはたぶん、「地味だな......」とつぶやくだろう。「ぜんぶある」は、趣味のオートバイが目指してやまないファン・トゥ・ライドなライディングフィール。試乗後のほとんどのライダーはきっと、「なんだかすごく楽しいぞ!」と感じるはずである。グラディウス400は、そんなファンがいっぱい詰まったクラスレスなオートバイだ。

 ライバルはどのオートバイだろう? と考えたときに最初に思い浮かんだのは、650でも他メーカーの400cc2気筒マシンでもなく、鈴木家の遠戚、GSR400 ABSだった。61psというクラス最高パワーはこの際どうでもよく、これがまたじつにいい"ぜんぶある"オートバイなのだ。

フレーム

スズキ グラディウス400 ABS ~最新バイクインプレッション~(1)

誇るように真っ赤に塗色されたグラディウス専用設計のスチール製トラスフレーム。筋肉質なボディパーツを肋骨のようなレイアウトで支えている。その下で抱え込まれるように収まるVツインエンジンの左側面は、遮音のための樹脂製カバーで覆われている(650にこの装備はない)。車体のカラーバリエーションは3種あり、フレームが赤いのはこの「サンダーグレーメタリック×グラススパークルブラック」のみ。トラスフレームをより際立たせるために、エンジンシュラウドがツートンであることに注目。

シート

スズキ グラディウス400 ABS ~最新バイクインプレッション~(2)

シートは薄くフラットながら、タンデム部のセンターパッドと前端をグレーに色分けすることで、平板に感じさせない抑揚のあるデザインが施されている。これはグラディウスのボディデザインすべてに共通して言えることだが、平面よりも曲面を積極的に用いることでグラマラスな印象を見る者に与えることに成功している。座り心地はルックスを裏切ってなかなか快適で、おしりが痛くなるようなことはついぞなかった。グラブバーは握りやすいものの、シート下に内蔵される荷掛けループの使い勝手はイマイチ。

足つき

スズキ グラディウス400 ABS ~最新バイクインプレッション~(3)

シート前部はクッション性を保ちつつタイト絞り込まれており、足着きは良好(筆者は身長172cmだが、かかとまで難なく着地した)。シート高の数値(785mm)は少々高めかもしれないが、ツインエンジンならではの車体のスリムさを利して太ももより下のホールド感は4気筒車のそれよりも高い。このことがライディング時の安心感にもつながっていて好ましい。ハンドルのグリップ位置と着座ポイントの位置関係もリラックスできる自然なもので、両腕で体重を支えるような前傾姿勢を強いられることは皆無だ。

走り

スズキ グラディウス400 ABS ~最新バイクインプレッション~(4)

ひとたび走り出せば、アイドリング時の当たりの柔らかい静かな排気音から想像するよりもずっとアクティブな動力性能が持ち味の水冷Vツインエンジン。トルクフルというよりは、回転上昇に応じてパワーを積み重ねていく粘り強いタイプだ。650にある、アイドリングの少し上から車体をグイグイ引っ張っていくような低回転のパワフルさはないものの、ニュートラルで適度な出力特性は大型バイク経験者でも(こそ?)納得のいく上質な完成度を誇る。この楽しさはきっと、400ccが見直される契機になるにちがいない。

スペック

SUZUKI GLADIUS 400 ABS

スズキ グラディウス400 ABS ~最新バイクインプレッション~(5)
全長/全幅/全高2130mm/760mm/1090mm
ホイールベース1455mm
シート高785mm
装備重量206kg
タイヤ(F)120/70-17 (R)160/60-17
タンク容量14L
排気量399cc
エンジン水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ
最高出力55PS/1100rpm
最大トルク4.1kgfm/8500rpm
価格¥808,500

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