KTM 390 デューク ~最新バイクインプレッション~

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KTM 390 デューク ~最新バイクインプレッション~

createMasayuki Miyazaki
camera_altKen Takayanagi

 元気のいい単気筒エンジンを積んだスポーツモデルがあればいいのに──。バイク好きはずっとそう思ってきた。スズキ・グースやヤマハSRXなど、もちろんその願いに応えてくれたモデルもあるにはあったけど、如何せん昔の話だ。2014年のいま、400ccクラスをぐるりと見渡せば70~80万円台が当たり前。騒音・排ガス規制はその頃にくらべてずっと厳しくなったし、結果、エンジン形式もほとんどが2気筒か4気筒。高性能モデルでもおおむね60万円前後だった80年代を知る四十路ライダーにとって、今のヨンヒャクは、精神的にも金銭的にも"ワクワク"できるものではなくなってしまった。いまさらヨンヒャク、コミコミで100万円なんて出せないよ......そんな声が聞こえてきそうだ。

 「いまさらヨンヒャク」「コミコミ100万円」。たしかにそう思う。だから400ccクラスはここまで衰退してしまった。でもそんな落日のカテゴリーに2013年、ポンと放り込まれたオーストリアからの使者に、バイク好きはふたたびドキドキさせられたのだ。

 KTM 390デューク、その価格58万6000円。デビュー時の2013年モデルには54万9000円というプライスタグがつけられていて驚いたが、2014年モデルになって少しだけ値上がりした。しかしこれが外車だということを含めなくても、このスポーツバイクはまだまだ安いと言える。

 ドキドキしたのはロープライスだけじゃない。先行発売されている兄弟分のデューク125/200(ちなみに両車とも値上がり)と同じフレームを使いながら、パワーに勝る倍の排気量のエンジンをメーカーみずからマウントしてしまったことに、おおいに想像をかき立てられた。15馬力(125)と26馬力(200)が、いきなり44馬力になったのだ。それは速いんじゃ? いや、絶対に速いだろ? 速いに違いない!RZ250のエンジンをRZ350のものに積み替えたのとはわけが違う。メーカーがベストなセッティングを出しているのだから......。

 さて、試乗だ。実車を目の前にすると、フレームとホイールのオレンジカラーがとびきり鮮烈だ。これは125/200にはないパウダーコーティングされた専用の塗色で、排気量が増えたにもかかわらず、見た目の重さはむしろその2車よりも軽そうにさえ見える。迫力や豪華さを優先させる国産車多数のデザインとは世界が違う。ポップはレーシーで、レーシーはポップなのだから。

 セルを回してエンジンを始動させると、股の下からタカタカと意外に軽快なエンジン音が響いた。375cc単気筒というアウトラインが想像させるほどシックではない。たった139kgの車体の取りまわしは抜群で、125デュークとほとんど変わらない。これはやっぱりすごいことだ。その余りある剛性感も、いま思えば125デュークがしっかりしすぎていたくらいで、結果的には390がもっともウェルバランスという趣きだ。

 さほど気を遣わずにクラッチミートして発進、シフトアップインジケーターの点灯を目安にスロットルオンオフと変速をリズミカルに繰り返すと、4速であっという間に100km/hへと到達する。これは文句なしに楽しい。だからと言ってフルスロットルでフロントタイヤがポンポンと浮くようなじゃじゃ馬ではまったくなく、低回転~中回転では比較的ジェントリーで、回した分だけトルクを生み出す生真面目な性格のエンジンだ。

 しかし高回転はさすがKTMだけあって、7000回転手前からがぜん元気が良くなる。低めのギアを使いながら高回転をキープして走るのは、"乗れてる"実感が得られてなんとも愉快! 不快な震動や回転の頭打ちとも無縁で、さりとて過去のKTM車全般にあった「回せ、回せ!」と迫ってくるような忙しなさもない。この優しさと思いやり、行き届いたサービス。125/200/390デュークの三兄弟は、もっとも民主化が進んだKTMだと言えるだろう。その中でも390は700系のぞみみたいなものだ。少しだけ高価で、そのぶんだけ速い。ストレスフリーなエンジン、必要十分なシャシー、素直なハンドリング、果てのサービス精神。そのルーツはみんな同じなのである。

 試乗を終えて思うのは、軽快なルックスを裏切らないスポーティさと意外になんでもこなす万能さを併せ持った、オールラウンドプレイヤーだということ。そう言ってしまうと"可もなく不可もない"当たり障りのないキャラを想像してしまうかもしれないが、それはちがう。何にも代えがたいライトウェイトさが真骨頂の、まるでTシャツ短パンで走るかのような気持ち良さが身上のスポーツバイクが390デュークなのだ。

 そう、むかしSRX-4をカリカリにフルチューンした改造マシン(←ぜんぶ死語)を、圧縮上げ過ぎであえなくブロー......そんな思い出をまるで昨日のことのように懐かしむアナタ。単気筒乗りの矜持を、2014年の今こそ復活させましょう! 少々なまったあなたのカラダを、390デュークはきっと優しくほぐしてくれるはずです。

フロント

KTM 390 デューク ~最新バイクインプレッション~(1)

125/200デュークのスチール製のトレリスフレームを流用し、新設計のDOHC4バルブエンジンを搭載する。ただしフレームは先行2車にないオレンジ色にコーティングされていて、見た目の印象はさらにポップに。エンジンの単体重量は36kgと軽量で、レブリミットは1万500回転に設定。ボア・ストロークは89×60mmとかなりのショートストロークで、潤滑方式は125/200のウェットサンプに対し390はドライサンプとなっている。始動はセルのみ。(遅れていたデリバリーは2014年1月よりスタート)

エンジン

KTM 390 デューク ~最新バイクインプレッション~(2)

スイングアームはアルミダイキャスト製。リヤブレーキのディスク径は230mmで、ブレーキキャリパーはブレンボのインド子会社「BYBRE(バイブレ、By Bremboの意)」のものを装着する。リヤのWP製モノショックはプリロードのみ調整可能。タイヤはメッツラーのスポルテックM5。

シート

KTM 390 デューク ~最新バイクインプレッション~(3)

モデルの身長は172cm。足着きにはなんの問題もないが、取り立てていい部類でもない。普通だ。このシート形状だと前後方向のスペースに余裕があまりないので、自由度という点では低いと言わざるを得ない。とくに大柄なライダーはバックぎみのステップと相まって窮屈に感じるだろう。

走り

KTM 390 デューク ~最新バイクインプレッション~(4)

139kgという圧倒的なライト&コンパクトボディとともに、高剛性フレームと素直なパワーフィールを利して、気遣い無用のファンライドが楽しめる。KTM本来の尖ったスポーツ性とショートストロークエンジンゆえのピーキーさを、いい意味で裏切るジェントルな特性が持ち味だ。

スペック

KTM 390 DUKE

KTM 390 デューク ~最新バイクインプレッション~(5)
サイズ全長2029mm/全幅836mm/全高1267mm
ホイールベース1367mm
シート高800mm
半乾燥重量139kg
タイヤ(F)110/70-17 (R)150/60-17
タンク容量11ℓ
エンジン375cc水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ
最高出力44PS/8500rpm
最大トルク35Nm/7250rpm
価格¥586,000(2014年モデル)

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